Edonomy Vol.9 「琵琶湖の葭(ヨシ)から持続可能な社会を学ぶワークショップ」

今回の“Edonomy エクスペリエンス”では、琵琶湖岸で長年葭(ヨシ)刈りをされている葭商・西六商店の西川六左衛門氏を訪問し、京すだれ川﨑代表の川﨑音次氏とともに葭の生態と用途、歴史や文化などについてお話を伺い、実際に葭刈り体験や葭葺屋根の建造物等の周辺の散策の後、持続可能な社会について議論しました。※Edonomy(エドノミ―®)とは、Edo(江戸時代)+Economy(経済)を合わせた造語です。

近江八幡市にある西の湖

今回葭刈りに訪れたのは、滋賀県近江八幡市にある西の湖(にしのこ)です。
西の湖は、大中之湖干拓地が造成された際に、水域として残った部分で、琵琶湖の東南岸にある琵琶湖の内湖では最大の湖です。

琵琶湖周辺では江戸時代から葭の生産が行われてきましたが、滋賀県内で現在も生業として続くのは西の湖周辺のみです。
西の湖のある近江八幡市では、奇しくも数日前から雪が積もり、通常は、積雪が無くなるまで葭刈りは行わないそうですが、当日は晴天だったこともあり、今回は特別に実施していただきました。

葭と葭刈りについて

まずは、京すだれ川﨑の川﨑音次さんより葭とすだれづくりについて、葭商の西川六左衛門さんから葭と葭刈りについて、お話しをいただきました。
葭は、葦とも書き、河川、湖沼などの水辺に、背の高い大群落をつくります。

地中には長く這う地下茎があり、条件がよければ一年に約4~6メートル ほど伸びます。
葭刈りは、冬場(1月〜3月)に行われ、風の少ない3月に野焼きをし、害虫駆除と雑草などのつるを焼きます。

野焼き後の灰は次世代の肥料となり、美しい葭が育ちます。この野焼きをしないと、古い葭と新しい葭が混ざる上に、害虫なども発生してしまうため、質のよい葭が育たないそうです。昔は中国をはじめ、海外から入ってくる葭も品質は悪くなかったそうですが、最近はこうした野焼きをしない質の悪いものが増え、「西六さんのものと比べると、全然違う!」と川﨑さん。

琵琶湖の葭はその美しさから高級材として重宝され、近年ではその葭を用いた川崎さんの製品は海外のインテリア等でも使われています。
また葭は、窒素やリンを吸い上げ、琵琶湖の水質保全にも一役買っています。

つまり、葭を使うことで、美しい葭の生育環境が守られるとともに、琵琶湖を守り、飲料水を守り、命を守ることに繋がります。 
簾は日よけはもちろんのこと、ほこりよけ、目隠し、雰囲気を変えることや室温を下げることにも役立ちます。

(左:川崎さん、右:西川さん)
(葭の生産工程や用途について西川さんが説明)

葭刈り体験

葭についての学んだあとは、長靴を履いて西の湖へ。
目の前に現れたのは3-4メートルほどの葭群。 

遠くから見るとそれほど高さを感じませんでしたが、目の前にするとその高さに圧倒されます。
慣れない鎌を片手に、もう一方の手で葭をつかみ、地上から10センチくらいのところを刈り取ります。

 寒い西の湖ですが、葭刈り中は体を動かすのであまり寒さは感じられませんでしたが、じっとしていると長靴の底からジワジワと寒さが感じられました。

燃料にもなる葭

一仕事をした後は、昼食です。
今回は、簾のお話をしていただいた川崎すだれさんのご厚意により、葭を燃料として釜でご飯を炊き、みんなでいただきました。

葭は燃料としても使え、木の皮を原料にした燃料とほぼ同等の発熱量を持つそうです。 
植物由来の燃料は、燃やしてもまた育つ過程でCO2を吸収するのもいいですね。

葭刈りに学ぶ持続可能な暮らしとは?

昼食後はもう一度、葭田に入って葭刈り。
みなさんコツもつかんできた様子で、集中して作業をしていました。

葭刈りの後は、お互いワークショップの感想をシェア。
参加されたみなさんそれぞれ、いろいろな学びや感じるものがあったようです。

▶参加者感想(一部抜粋)

「ますます、葭への興味が深くなった」
「工業製品では得られない面白さを感じた。ぜひ新しい用途の可能性を探っていきたい」
「こうした文化や営みを途絶えさせたくないなと感じた」
「すだれはホームセンターでよく見かけていたが、今回刈った葭と比べると随分薄くて細いなと感じた。本当に良いものでつくられたものを、今後は使っていきたいたいと思う」
「手間暇かけてつくられたものを使うと豊かな気持ちになれる。そこに価値があるという日本人の感性が戻ってきて欲しいなと感じた」

琵琶湖の環境と水を守る葭。簾に用いられると日よけにもなり、美しい景観となる。
壊れたら修理して使うこともでき、それでも使えなくなったら燃料として使う。

これこそ持続可能な社会にふさわしい材料ではないでしょうか。
Edonomyプロジェクトでは、今後も身近にある「Edonomyなモノやコト」をフォーカスし、「学び」のセミナーと「気づき」の体験ツアーを予定しております。

これからもますます面白くなりそうなEdonomyセミナー&ラーニングツアーにぜひご期待ください!

イベント概要

「琵琶湖の葭(ヨシ)から持続可能な社会を学ぶワークショップ」

 「琵琶湖の葭(ヨシ)から持続可能な社会を学ぶワークショップ」

日時:2022年1月15日(土)10:30-15:00
講師:川﨑音次氏(京すだれ川﨑), 西川六左衛門氏(葭商・西六商店)
集合場所: 滋賀県近江八幡市円山町158
※近江八幡からバスで「円山(まるやま)」下車徒歩4分
※地図→ https://goo.gl/maps/W88HXq9gfReFXfGR7
参加費:3,500円(税込/昼食代含む)
※現地までの交通費は実費ご負担ください
定員:15名
主催:COS KYOTO株式会社 Edonomyプロジェクト

タイムスケジュール

10:30 西川六左衛門氏宅前集合、レクチャーを実施
   ・川﨑 音次氏(京すだれ川﨑)よりすだれと葭について
   ・西川 六左衛門氏(葭商・西六商店)より葭の生態と現状、琵琶湖について
11:15 葭刈体験①
12:00 昼食を取りながら質疑応答
  (昼食後、希望者は近隣の團山神社や葭葺建造物を見学)
13:00 葭刈体験②
13:45 ディスカッション
15:00 解散

講師について

川﨑音次氏(㈲川﨑すだれ)
京都市内の老舗すだれ店での修行を経て、嵯峨野にて独立。
すだれの技術と素材を守り、未来に伝えるために多様化し続ける工房を目指す。

▼西川六左衛門(葭商・西六商店)
昭和9年(1934年)生まれの87歳
代々続く、葭商をつなぐ。
弘化2年(1845)江戸時代末期の建物に住み葭と向き合う日々。

この記事を書いた人

COS KYOTO株式会社

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