Edonomy Vol.5「里山の暮らしから持続可能な暮らしを学ぶツアー」

日本では、年間2,531万トンの食品廃棄物等が出されています。(※農林水産省及び環境省「平成30年度推計」)
このうち、まだ食べられるのに廃棄される食品、いわゆる「食品ロス」は600万トン。
これは、世界中で飢餓に苦しむ人々に向けた世界の食料援助量(2019年で年間約420万トン)の1.4倍に相当します。
そうした無駄が資源を枯渇させ、ごみを増やし、環境問題に至っています。
「無駄を無くして極力ゴミを出さずに、人々が心豊かに暮らせる循環型社会」を実現するにはどうすればよいのでしょうか?
私たちEdonomyプロジェクトは、まずは身近にある「循環型社会の事例」を体験を通じて学んでいくための「ラーニングツアー」を企画しました。
※Edonomy(エドノミ―®)とは、Edo(江戸)+Economy(経済)の造語です。

イベント概要

・日程:2021年7月22日(木・祝)~7月23日(金・祝)
・日数:1泊2日(※食事:朝1回、昼2回、夜1回付)
・場所:古民家tehen(てへん)・roku(京都市右京区京北周山町西丁田21-3)
・料金:おとな1名11,000円(税込)※モニターツアー(セミナー参加費含む)
・共催:COS KYOTO(株)、(株)ROOTS

事例はどこに?

 みなさんは「里山」という言葉をご存知でしょうか?
 「里山」とは、集落・人里に隣接した結果、人間の影響を受けた生態系が存在する山のことです。

 「里山」は都市から離れているために、都市生活者の視点では不便なことが少なくありません。
 一方で、不便な場所では、人々が助け合って生きていくことになるので、知恵と工夫をもたらします。

 そうした先人の知恵と工夫がたくさん詰まった「里山暮らし」を現代に合わせて実践されている方々のお話を伺い、「里山暮らし」を体験するために京都市右京区の最北端にある京北町を訪れました。

27代にわたって京北町に住んでいる河原林さんの事例

 桂川上流にある京北町は、地域の93%を森林が占め、かやぶき屋根の家も残る「里山」です。

(美しい山々と青い空が広がる京北)

 かつては、この桂川から材木を流し、京都の暮らしを支えた林業の地域です。
 そこで、27代にわたり古民家と地域を守り続ける河原林さんにお話を伺いました。 

(囲炉裏を囲んで「持続可能な暮らし」のお話をされる河原林さん)

 河原林さん宅のトイレは所謂ボットントイレでした。
 しかし昔と異なり、微生物やおがくず等を用いるコンポストトイレとなっていて、いやな臭いは全くしませんでした。

 河原林さんは、そこからできた堆肥で作物を育て、その作物をいただくと共に鶏も育て、鶏が産む卵をいただき、鶏糞から堆肥を生産されています。

 そうした資源の循環は、池づくりにも流用されていました。
 河原林さん宅の池の水は、溜めるのではなく、小川とつながり循環させるというデザインだったのです!

 それにより、いつも異なる川魚を見ることができるのです。
 (しかも、運が良ければオオサンショウウオも!) 

(「流れる池」を説明される河原林さん)

 また茅葺屋根は15年から20年ごとに葺き替える必要がありますが、かつては、集落の共同作業として茅葺きが行われていました。
 このように京北町では「資源の循環」と「支え合いの文化」が培われ、伝授されてきました。
 河原林さんは、こうした「里山暮らし」の知恵と工夫を次世代へも伝えるべく、農家民宿もされています。

都会からの京北町へ移住された方の事例

 昨今の京北には都会からの移住者も少なくありません。
 今回、ツアーを共催した(株)ROOTSのお二人もまた東京と大阪それぞれからの移住者でした。

 そしてそんな彼らがもっとも重要視していたのが地域の方々との繋がりでした。
 通訳を生業のひとつとする中山慶さんは、地域の人々に英語を教えています。その対価としてお金ではなく、農作物などのモノをいただくこともあるとおっしゃっていました。

 茅葺きの古民家の美しさに魅了されて移住して来られた曽 緋蘭(ツェン フェイラン)さんは、移住した当初は、自宅の裏山に生えている植物の名前もわからないくらい、知識が全くありませんでしたが、近隣の方々との交流の中で「これは山椒の木」「これはお茶の木」「収穫の季節は…」などと、一つひとつ教わっていきました。また、茅葺き屋根の葺き替え方法は、河原林さんをはじめとした地域の方々に教わり、そして一緒に手伝ってもらいながら葺き替え作業を経験し、その技術や知識を少しずつ身につけてこられています。

(茅葺屋根が美しいフェイランさんの古民家)

 このように京北への移住者もまた、持ちつ持たれつ、近隣の住民と協力し合い、受け継がれてきた知恵や工夫で「持続可能な暮らし」を楽しみながら実践されている様子が伺えました。

(地元の人々との交流について話をする中山さんとフェイランさん)

海外からの移住者の事例

 京北には日本国内のみならず、フランスからの移住者もいらっしゃいました。
 古民家にお住まいのセバスチャンさんとメラニーさんは、アーティスト兼建築家。

 ご近所の材木店から廃材を譲り受け、日本の大工さんからは技を学び、ご自身の手で古民家の改築をされながら作品づくりをされていらっしゃいました。

 日本語は話せずとも、オープンマインドでいると、地域の人々が入れ代わり立ち代わり覗きに来て助けてくれるので、とても楽しいと話していました。 

(古民家暮らしの魅力を話すセバスチャンさんと通訳の中山さん)

京北の里山に学ぶ持続可能な暮らしとは?

 今回の里山ツアーで一番に感じたことは、里山に住む方々同士の心の距離が近いということです。
 一軒一軒の物理的な距離は遠くても、心の距離は近く、そして自然や資源を大切に、丁寧に暮らしていると感じました。

(東京から京北に移住された方が作られた地産地消の安全で愛情のこもったご飯)

 こうしたことから、私たちは自分たちの日常において、里山の暮らしをそっくりそのまま実現できずとも、まずは、無駄なゴミを出さないために地域の人たち同士がつながって知恵を出し合い、工夫を心がけ、人を思いやり、協力し、丁寧に暮らすことが「持続可能な暮らし」への第一歩であると感じました。

 Edonomyプロジェクトでは、今後も身近にある「Edonomyなモノやコト」をフォーカスし、「学び」のセミナーと「気づき」の体験ツアーを予定しております。

 ますます面白くなりそうなEdonomyセミナー&ラーニングツアーにぜひご期待ください!

この記事を書いた人

COS KYOTO株式会社

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