2025年12月、カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム、東ティモールなどASEAN諸国の若手官僚15名が京都伝統産業ミュージアムを訪れました。短い時間の中で、工藝の世界に触れ、手を動かした——そんな濃密な1.5時間のプログラムをご紹介します。
アジアと京都を結ぶ工藝
ミュージアムツアーでは、まず参加者の皆さんにこんな質問を投げかけました。
「京都の74ある伝統工藝品の中で、材料が京都で採れるものはいくつあると思いますか?」
さまざまな数字が飛び交いましたが、正解はなんとわずか2つ——北山杉と京銘竹のみ。会場には驚きの声が広がりました。
京都のものづくりと文化の本質は、独自性ではない。実はMADE IN KYOTOはたくさんあれど、BORN IN KYOTOは少ないのです。
仏教、お茶、漢字、織物、ラーメン……日本文化の多くは、長い年月の中でアジア諸国から伝わってきました。京都はその玄関口として、渡来した文化や素材を職人たちが受け入れ、巧みな技術で磨き上げ、「京都らしさ」へと昇華させてきたのです。
「どこかで見たことあるかも」——それがアジア諸国との接点。参加者の皆さんも「たしかに!こういうのある!」と口々に話されていました。

循環する京すだれの世界
後半は、「京すだれ川崎」の皆様をお招きしたワークショップ。竹と葭を使って、五重塔の形をしたコースターを手編みで作る体験です。
京すだれ川崎さんは、数少ない手縫いのすだれ職人。手縫いにこだわるのは修理しやすくするため。修理をすれば、すだれは100年使えます。
しかも使うのは海外産の安価な材料ではなく、琵琶湖周辺で育つ最高品質の葭です。葭は水質浄化に欠かせない植物。つまり、材料を調達すること自体が琵琶湖の循環を守る行為になっているのです。
さらに驚くべきは、その姿勢。国内の葭農家は高齢化と需要減で減少していますが、川崎さんは製品数に関わらず、毎年決まった量を必ず農家から買い続けています。刈り取り作業も手伝い、農家の継続を支え、地域の自然循環そのものを守っているのです。
そして仕入れた葭などの材料は、一切無駄にしません。余りものまで含めて、プレイスマットやオーナメント、ドームなど、さまざまな形で「一生懸命つくり切る」——他にもサステナブルな面を紹介すると、参加者の皆さんは驚かれていました。

手仕事がもたらす癒しと気づき
ワークショップでは、皆さん非常に熱心に取り組まれていました。完成したコースターを手に、「楽しかった」「癒された」「新しい技術を学べた」といった感想が次々と。
近年、ものづくり体験はセラピーのような癒しの効果が注目され、世界中で人気が高まっています。手を動かし、素材に触れ、形を生み出す——その時間そのものが、心を整えてくれると紹介すると、「たしかに!もっと作りたい」と気に入っていただきました。

文化の循環は、対話から始まる
それぞれの文化の循環が、これからどう響き合っていくのか——今回のプログラムは、その対話の始まりとなりました。
この体験が、参加された皆さんにとって何かしら自国の工藝を改めて考えるきっかけになれば幸いです。
ご協力いただきました京すだれ川崎さま、京都伝統産業ミュージアム、 日本コンベンションサービス株式会社の関係者の皆さま、あっという間の素敵な機会をありがとうございました。

Credits
協力: 京すだれ川崎、京都伝統産業ミュージアム
発注元: 日本コンベンションサービス株式会社
